インターネット通販や贈り物など、私たちの生活との関わりが深いヤマト運輸株式会社も、ピアボーナスを導入している企業の一つ。ヤマト運輸が運用する「満足BANK」の実施目的や実際の運用方法、現場での効果について見てみましょう。
ヤマト運輸が満足BANKを導入した目的の一つは、社員のモチベーションアップ。世の景気が上向きだったバブル時代なら、現金を支給することで社員のやる気を引き出すことは可能でした。しかし、経済成長が頭打ちとなった現代ではやる気を引き出すだけの現金を支給するのは難しいです。若い人を中心に「モノからコト」へ価値観が変化していることもあり、お金だけでモチベーションアップするのは現実的ではありません。そこで、お金をかけずに社員のモチベーションアップすることを目的に、満足BANKの運用が始まりました。
決められた時間と指定を守る日本の物流サービスは、高い品質を保つためにはサービスドライバーのモチベーションの維持が大切。しかし、物流サービスの現場ではミスがあったら叱る文化が広がっていて、ぎすぎすした雰囲気でやる気を維持するのが難しい状況でした。満足BANKは、社員同士が感謝や賞賛の言葉を送りあい、「ほめる文化」現場に定着させることも大きな目的の一つでした。
実際にヤマト運輸がどのようにピアボーナスを運用していったのか見ていきましょう。
満足BANKは同僚からの「ありがとう」や「すごい」という評価をポイントで可視化し、積み重ねていくことができる社内システムです。ポイント数を可視化するだけでなく、感謝や賞賛の中身もチェックすることができます。サービスドライバーだけでなく全社員が活用でき、誰が誰をほめているのかも閲覧できるのが特徴。
2011年度には運用サイトをリニューアルし、氏名検索機能の向上など、社員同士で投票しやすい環境を整えました。前年度に3万7千人前後だった満足クリエイターは、6万3千人まで増加しています。
同僚からほめられると10ポイントが付与され、ほめた人にも3ポイントが貯まります。200ポイントで銅バッジ、500ポイントで銀バッジ、1000ポイントで金バッジと表彰され、最高ランクは2000ポイントのダイヤモンドバッジ。さらに、全体のポイント上位者は式典の際に表彰する取り組みも行いました。
ピアボーナスを導入したことによって、どのように課題を解決していったのかチェックしていきましょう。
満足BANKにポイントを貯めていっても、直接給料には反映しません。しかし、社員同士がほめる文化が定着したことにより、モチベーションアップや荷物事故の減少などの好影響が現れました。部署移動した同僚に前の部署からたくさんの感謝の言葉が満足BANKを通じて届き、新しい部署での活力につながった事例もあります。送った人も、もらった人もうれしい満足BANKのポイント制度は徐々に社内に浸透し、現場の雰囲気も大幅に改善されたそうです。
満足BANKがモチベーションアップに大きな効果を発揮したことで、活動はヤマトグループ全体に広がります。ヤマトシステム開発は「ハッピーポイント制度」、ヤマトホームコンビニエンスは「ありがとうポイント制度」など同じようなピアボーナス制度を作りだしました。社員数が多く新しい制度を広めるのが難しい大きな企業における成功事例は、多くの企業に影響を与えています。ただお金を配るのではなく、社員同士の結束を深め、サービス品質の向上につながる取り組みといえるでしょう。
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